2015年9月27日日曜日

アムールトラの出産について

 8月下旬から出産に備え、カメラを設置しモニターで観察をしていた、アムールトラの「ザリア」ですが、 9月9日朝、仔の鳴き声で出産を確認しました。

 モニターで確認したところ、仔の姿は確認できず、「ザリア」も鳴き声に反応していなく、育児の様子が見られないため、担当者と獣医で産室に入り、仔の状態を確認しました。
 4頭の仔を確認し、1頭は羊膜もかぶったまま死亡しており、生きている3頭も胎盤もついたままで、出産後の処理も含め育児している様子は見られませんでした。

 録画ビデオを確認したところ、深夜から早朝にかけて出産した様子が見られ、「ザリア」に全く仔の世話をした様子はありませんでした。このことから、育児放棄と判断し、仔を取り上げ、人工哺育に切り替えました。

 仔はオス1頭、メス2頭で低体温・衰弱した状態でしたが、加温とマッサージによって一旦はミルクを自力で飲むまで回復しました。しかし、生後2日でメス1頭が死亡し(解剖の結果、肝臓からの出血が認められ、産後すぐの外部からの圧迫が原因と診断)、次に、生後3日でメス1頭が死亡しました(解剖の結果、粉ミルクの消化不良と診断)。

 残ったオスの仔は、順調に成長(体重1.2キロ→1.8キロ)していましたが、生後11日目夜に死亡しました。解剖の結果パスツレラ症(心外膜炎・肺炎・胸腹膜炎:パスツレラはネコの口腔内等に常在する細菌です)と診断しました。

 結果的には親の初乳を飲んでいなかったこと、産後の処理が全くなかったため、取り上げた段階で衰弱していたことが今回の死亡につながったと考えています。
 残念ながら人工哺育による生育はできませんでしたが、「キリル」と「ザリア」の繁殖の相性がよいことは確認できました。

 「ザリア」は産後も食欲・元気共に変わりなく、現在は展示を再開しています。
 今後は来シーズンの繁殖成功のために、まずはザリアが自然哺育できるようにさらなる環境改善に努めていきたいと考えています。
アムールトラのザリア